近年稀に見る

成人性アトピーとでも言うのだろうか。

10代の頃から季節の変わり目、特に春から夏にかけて体が痒くなり、掻いたらいかんと言われても我慢できずに掻いてしまった。皮膚が自分の汗に耐えられないらしい。

もちろん皮膚科には行くのだが、何せ病院に行くのが好きじゃない。嫌いの部類に入る。

せっかく診てもらっても出された薬が合わなくて、悪化はしないが即効性がないとすぐ行くのをやめた。
得たいの知れない軟膏はベタベタするだけで治らないし、痒いし、春から夏にかけての季節は通院するのにまた汗をかくし、長く待たされても診察は2分ですぐ会計。本当に嫌だった。

そんなこんなで皮膚科ジプシーを長いことやっていたら、大学生になるころにはさらに酷くなった。掻いたとは言えそんなにボロボロになるのかい?というくらい皮膚がボロボロになってしまったのだ。

見かねた母が人から評判のいい病院を聞いてきてくれた。

その先生は若い女性で、「アトピーの薬を塗る前に、刺激の少ない乳液で浸透しやすくすることが大切。美容のために顔に塗って、保湿するのにもすごくいい乳液だよ」と教えてくれた。今まで謎のベタベタ(軟膏)を何の説明もなし出され、塗りたくっていただけの私は嬉しくて、毎回自転車で30分かけて通った。

しかし、若い女の先生は育児のために診察日が少なく、あまり都合がよくなかった。私自身の症状がよくなるのと同時に行かなくなるのは自然なことだった。

そんな頃に出会ったのが、お笑いトリオのジャングルポケット斎藤さんに似た先生だ。

先生はとにかく熱い男で、私が症状を1説明すると5~10で返してくれた。熱い。顔面も熱けりゃ診察も情熱的だった。
正直私は若干引いていたが、通える距離で会いに行ける熱い医者はなかなか貴重なので結構頑張って通った。

出された薬が効かないときもあった。飲み薬のかゆみ止めだ。私は若干キレ気味で「飲んでもめっちゃ痒いんですよぉ!」と訴えた。熱い男は「わかった!わかったから!」となだめたが、まー痒いもんは痒い。熱い男は私にアレルギー検査を勧めた。

検査は採血によるものだった。

私は採血が嫌いだ。血管が細くてなかなか難易度が高いらしい。両腕を出してそのどちらにも内出血を作られただけのときもある。許さない。

全医療関係者に告ぐ。射してからグリグリするのは本当に止めてください……(涙)そうされるくらいなら不健康を選びたくなるほど嫌なんです…(涙)

当時の採血の記憶は無い。ショックのせいだろうか。とにかく検査は終わり、一週間後に結果を聞きに行った。

先生「ヘミヤマさん!アレルギー検査の結果だけどね。すごいよ。」


私「!…な、なんですか!」


先生「ヘミヤマさんね、近年稀に見る

健 康!」

けん、こう?

先生「アレルギーね、なにもない!よかったね!」


なにも…ない?


先生「普通ならちょっとは出るもんだけどね、何にも反応無い!強いて言えばブタクサかな?ブタクサの季節は気を付けて!」


痒いからもっと強いかゆみ止めを出してくれと半狂乱になったことのあるヘミヤマは、近年稀に見る健康の烙印を押された。なぜか急激に恥ずかしくなった。健康を恥じたのはこのときが最初で最後だ。


それからどうかというと。


まー、先生のお陰でよくなりましたが、今の時期は微妙に痒い。(ブタクサのせいかもしれない)
それだけじゃなくて、半年くらい謎の紫斑(しかも広範囲)が消えないし、半年くらい治らないかさぶたのようなちっさいかゆみの患部。あと手湿疹。これもちっさいが割れてパッカーンである。


どれも病院に行くのが面倒で、放置している。しかしきっと治るだろう。なぜなら私は近年稀に見る健康だからだ。