隠されたロマン

「ショートカットにしたいって言ったら旦那さん、何か言わない?」

今の美容院に通い始めて1年くらいになる。腕の確かなイケオジな美容師さんは、私の言語化できないオーダーを適度にくみ取り、一番の要望である「いい感じ」に仕上げてくれる。店内のBGMも決してジンギスカン等流さないセンスのよさだ。(※元ネタは過去記事参照のこと 祈りのポーズ - じゆうちょうの反省文 )

ウェディングフォトの撮影が終わったらバッサリ切ってショートカットにしたい。それだけを楽しみに、髪を切らず、すくこともせず、真夏の暑さを耐え抜いた。(ちなみに夏は頭皮からの汗が尋常じゃなかった。このころは自転車通勤をしていたのだが、頭からの汗が目にしみて大変だった。)

写真撮影まであと1か月というところで、撮影でしたいヘアスタイルを相談しながらメンテナンスをしてもらった。ウェディングフォトが終わったらがっつり行きたいのでよろしくと伝えると、ショートカットにすることについて私の夫が何も言ってこないか尋ねてきた。

妻及び彼女のヘアスタイルについて、自身の希望・理想を押し付ける殿方が少なくない。と言うのは嘘だと思う。むしろ逆だ。夫及び彼氏の理想とする女性に少しでも近づきたくて、せめて髪型だけでもそれに寄せたい、という古風な女性が多いだけだ。統計も何もないただの実感としてだが。(というか相手の好みの見た目にすると喜んでもらえるからそうしちゃおっかな~みたいな感情は男女ともにあると思う。かわいいね。)

私の夫は全くそういうことを言ってこない。なんかそういうのないの、私にやってほしいヘアスタイルとか、と聞いたことはある。「無い」と即答だった。無いんか~い、即答か~いと思ったが、「あなたがご機嫌でいられるならなんでもいいのよ…」という菩薩回答だった。

新しいブラを買った。いつもネットで一か八かのギャンブルみたいにしてサイズを選んで買っていたのだが、久しぶりに本当のサイズを知りたいと思ったのだ。ネットで買ったブラがなんとなく合っていないのは感じていて、でもそれは私の胸のサイズがブラに対して大なのか小なのかが判然としなかったからだ。

ランジェリーショップでちゃんと試着をし、ジャストサイズのものを選んだ。やっぱりジャストサイズは着心地がいい。不快感があるのは無意識にストレスになっている。こういうところからストレスを排除するのは大切だ。ランジェリーショップの店員さんに、ブラとおそろいのデザインのショーツを勧められたが、断ってブラだけ買った。

ブラとおそろいのショーツを買わなくなって久しい。テロテロ、スベスベの生地感が好きでないのだ。ショーツという表記よりも、パンツの方がしっくりくるし、妙に手の上でキョロキョロとする手触りで新種の軟体生物とも思えるそれより、綿100パーセント!しっかり生地感!肌に優しい!というのが手から伝わるパンツの方が好きなのだ。だから私はいつも無印良品一択です。何の情報。

夫が洗濯をたたんでいるところにちょうど私のおニューのブラがあったので、「こちらおニューでございますことよ」と教えてあげた。逆セクハラのような自己申告に夫も疲弊しているかと思われた。が、意外にもこんなことを言ってきた。

「…パンツは買わなかったんでしょ?」

何だその反応。あれ、もしかして、なに、ブラとセットで着てほしいのか。無論買わなかったと答えたが、内心ちょっと複雑だった。髪型については「あなたがご機嫌でいられるならなんでもいい」と言ってくれたのに、下着に関してはセットの方がいいというのか。結婚して初めて気が付いた。そうか、そうなのか。おニューのブラを畳まれた私の衣服の山に載せる夫は、少し寂しそうにも見えたような、そうでもなかったような。

まぁ、何を言われようとパンツは無印良品一択に変わりないのだが。