通勤読書感想文「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

日本人の母(著者)とアイルランド人の父の間に生まれた息子。そんな息子というフィルターを通して考える、イギリスで直面するレイシズムジェンダー、格差、貧困、教育、EU離脱。息子は考え成長する。

息子とこんなに対等に話せるようになったら確かに楽しいだろうな、と少しうらやましさすら感じる。

決してふざけた内容では無いが、軽やかな文、というか途中ルー語かなとも思える書き味はとても読みやすく、4~5時間あれば読了可能かと。

小学校・中学校の制度からまず違う。ハイクラスな家庭の子が集まるようなカトリックの小学校から、地元の元底辺中学校に進学を決めたあたりからこの親子、もう面白い。

街を歩いているだけで東洋人への差別用語を投げかけられることがある。シングルマザーの貧困家庭で荒れた兄を持ち、ボロボロの制服を買いかえることなんてできずいつもお腹を空かせる友人がいる。中国から移住してきた生徒会長もいる。移民がたくさんいる教室内で、同じく移民であるハンガリー人の友人が強烈なレイシズムをのたまって、クラスメートたちから浮きまくる。(そんな彼と一緒に映画ボヘミアンラプソディーを見に行ったという話が好きだ。)

とにかく息子の周りはいろいろだ。面白いことばかりじゃない。それは日本とは種類の違うシビアさがあって、渦中にいるのがつらいこともあると思う。著者の息子さんがすごいのが、誰にでもフラットでいようと努めているのがわかること。冷静に分析しようとしていること。それでもわからないことは母親に相談すること。(父親は熱いため面倒だから相談相手に選ばれていない感じがいい)

著者がかつて保育士だったころの、バイオレンスな女児リアーナを思い出す章はセンチメンタルになった。いろいろな背景を持ち里親に出され、温かい家庭に出会える子供、そうではなくて定期的に里親が変わる子供。イギリスのそういう事情も、この本から知ることができた。

この本は「のほほんとした海外生活」をまとめた本じゃなくて、それよりももっとずっとリアルなイギリスの「生活」。だってEU離脱が、その角度で?みたいなところで国民生活に関わってるなんて思いもしなかった。

またこの本は著者による息子の、かけがえのない成長の日々の記録。バンドを組んで作った歌が、祖父の盆栽をテーマにしたロックソングだなんて、最高に愛おしいじゃないか。

学びも多く、はっとする一冊。ボーっと生きてたわ私、と、つり革を掴みながら気づかされたのでした。

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