本を盾にして。

週3の完全在宅勤務を手にした私は、それと引き換えに週2のドアツードア片道2時間~満員電車に乗って~という地獄の通勤を余儀なくされたのだった。(了)

(了)じゃない。まだ終わらない。始まったばかりだ。

満員電車に乗っているのは実質合計1.5時間あるかないかだが、まー地獄だ。運よくすぐに座れたらまだマシだが、座れない。目の前20センチ先に、顔の右15センチ先に、背中0センチの距離に、人のカバン・スマホ・背中。背中と背中がくっついちゃったときは悟りを開けそうになりました。満員電車で解脱(ニルヴァーナ)。人生って、どこで何が起きるかわからない。

満員電車isカオス。しかも無駄に長い。カオスで長い片道2時間の通勤によって失ったものは多く、それを数えるとなかなか切なくなる。通勤がなければゆっくり起きて、しっかりごはんを食べ、がっつりトイレに行けたのに。だらだらテレビを見て、朝食に使った食器もきれいに洗って、洗濯物も干せたのに。

全てから丁寧さを欠き、時にトイレに行けず、朝ごはんも適当になる。グッバイ丁寧な暮らし。もともと丁寧に暮らしてはいないけど、それでも今よりかはマシだった。畜生、片道2時間。私は転勤無しの雇用条件のもと入社したというのに。(勤務地だった事務所をぶっ潰し、都内の本社に統合されたのだ。)会社畜生。通勤畜生。全部畜生。

もはや畜生マンである。通勤は他の生活面の全てに響く。週2とは言え、そんなのどうなるかわからない。週5になるかもしれない。だって会社員だから。畜生。会社畜生。

会社に対しても不満も募り、通勤電車でのストレスもたまり、実際問題体力的にもきつくって、この両距離の通勤が始まって2週連続風邪をひいた。2週目はウィルス性胃腸炎だった。降りたこともない駅に降りてトイレに駆け込んだりしながら帰った。いいことがない。長距離通勤、メリットが全くもって、ない。恨み節だよ、通勤は。ストレスフルだよ、通勤は。

通勤中のストレスから少しでも逃れるために、最近は適当に本を読み漁っている。何年か前に前職のパートのお姉さまから突然頂いた本だ。読み終わったからと言っていたが、なんと本は10冊以上。全てがほとんど新品で、どれも発売されてから1年以内のものばかりだった。なぜそんなにたくさんの本を私にくれたのかわからないが、ありがたくいただいて、ゆっくり自宅で寝かせていた。つまりは手を付けていなかった。

それがこの畜生通勤のおかげでついに日の目を見ることになった。週2日×2週間で1~2冊読んでいる。人生でかつてこれまでハイペースに本を読んだことがあっただろうか。(もともと私は本を読むペースが速い方ではない。)ありがとうございました、前職のお姉さま。通勤の苦痛から逃れられています。今の私が心の底から畜生マンにならずに済んでいるのは、本をいただいたおかげです。ストレスフル通勤から逃れられるからか、自分で選ぶことが無かったであろう本がどんどん読める。文庫でも新書でもソフトカバーでもハードカバーでも、なんでも読める。(ハードカバーは重いが、満員電車で本越しに人様のお顔を感じずに済むので、私は結構気に入っている)

本当に何でも文字を追いかけることができる。文字を追いかけるだけになって全然頭に入ってこないことも多々あるが。林真理子の登場人物が多すぎるハードカバーのエッセイは特にそう。誰が誰だかわからないまま突っ走って、まもなくそのままゴールしそうだ。読後の感想はきっとこれ。そういえばあの人誰だったんだろう。

恨み節だよ、通勤は。ストレスフルだよ、通勤は。

とりあえず今は、本を盾にして戦ってる。戦っているのだ。畜生!