悪夢とケーキ

目覚めが最低の夢を見た。

何の拷問か、BIGなBENを食らうという内容だ。ショッキングすぎる。オエ…。あまりの気持ち悪さに起きてすぐにスマホを開いて夢占いを検索する。

 

「夢占い 糞食」

Google先生もこんな検索、不本意だろう。だいたい朝一で検索することではない。

 

しかし検索結果は意外なことに

 

 

金運が絶好調っぽい…。

でももう絶対見たくないよ…

 

そんな夢見は悪いが金運はよかったその日は、母の手術当日だった。

 

前日に、母本人に手術は緊張するか聞いてみた。

「まだ他人事みたい。本当に大変なのは患者よりドクターだと思うから、自分は寝てるだけなのに緊張するなんて言ったら悪い気がする」

母らしい言い方だ。母はこんな時ですら、自然な感情を抱くことにも後ろめたさを感じる人。緊張してもいいんだよ、私は緊張するよ、と返事しておいた。

 

手術中と思われる時間帯、私は仕事中だったので、休憩時間にスマホを見て予期せぬ緊急連絡が無いことを確認してほっとした。「便りが無いのはよい便り」の言葉を何度も頭の中で繰り返した。

もし何かあったら母はたぶん、幽体離脱だとか念だとかを送って虫の知らせをするタイプ。大丈夫大丈夫。何も感じない。

なんならその日見たのは金運絶好調の最低な夢。大丈夫大丈夫。金運でも何運でもいい、絶好調なのだ。

 

夕方、帰宅中に父から連絡があった。手術は無事に終わったとのことだった。

 

その後ちょっとして、父から「今日の夕食です」と写真が送られてきた。自作の肉豆腐と、うなぎのかば焼きと、あと何かしら副菜のようなものを食べるらしかった。どうみてもタンパク質とりすぎだろという内容だったけど、それについて私からは何も言わない。「お祝いです」と父。だと思った。私も今日はケーキ買って食べます、と返事した。

 

前日の夕食から手術の翌日まで約2日間は何も食べられない母に代わって、外野ばかりおいしいカロリーをとってごめんね。退院したらお祝いにおいしいものたくさん準備しますし、その日見た夢の話もしてあげるからね、と独り言のようなことを考えながらコンビニでケーキを買った。