女友達

自分の誕生日がとうに過ぎて11月半ば、高校の時代の唯一の友人から「遅くなりました。おめでとう」とLINEが来た。

友人はLINE不精というか、LINEを使っていてもキャリアのメール時代のスピード感と全く返信速度が変わらない。いや全然、それ以下だ。返信は基本的に一日一通。多くて二通。そんな感じだ。

誕生祝いのLINEをくれた日、すでに誕生日をとうに過ぎていたので、もはや何をきっかけに思い出してくれたのかわからないけれど思い出してくれてありがとう。そんな思いで私も返信し、そういえば私たちの最後のやりとりっていつだったっけ、とさかのぼる。

すごいや私たち、前回もそのまた前回も、お互いの誕生日を祝う以外にやりとりしてない。さらにすごいなと思うのが、会いたい気持ちを「会いたいね」「会おうね」「落ち着いたら会おうね」「また声かけるね」だけで済ませて早5年くらいたっている。

すごいや私たち。最後に会ったその当時付き合ってた人とはその後数か月くらいで別れたんだけど、その話したっけ。ドライブの時にどんな音楽かければいいのかわからな過ぎて、ちょうどいい感じになつかしいグラミー賞の曲でもかけようかと話した記憶はうっすらある。

私が上京してから、友人とは半年に一回くらい会っていた。会うのはいつもお互いの住んでいるところからちょうど真ん中くらいだからという理由で新宿。何かちょっと面白そうな展示とかがあれば美術館に行ったりしたが、基本的には何をするでもなく、ウィンドウショッピングに見せかけてずっと話していた。近況から始まって仕事の愚痴で、最後の方には最近はまっているお菓子や食べ物の話。「あのパン屋のクリームパンのくちどけ最高。でもカロリーがやばい」と、うら若き女性らしくカロリーを憂い嘆いた。クリスマスのシーズンともなれば新宿には恋人たちがあふれていた。私たちはそれを眺めて、どちらかが「今年も一人。咳をしても一人。」とぼやき、もう一人がニヤっと笑った。雑貨屋のペアの食器も「一人で日替わりで使うのが関の山よ」とつぶやいて、「一枚割れたときのために、独身だろうがペアの食器は役立つんよ」と微妙なポジティブさで返して笑いあった。

 

そんな友人とはコロナの前からなんとなく会う頻度が落ちて、そしてコロナの流行によって、はっきりと会うきっかけがなくなってしまった。それでずっと誕生日だけの連絡だった。誕生日以外の何でもないとき、私が婚活パーティーの帰りに新宿でむなしくて、「所用で新宿に来ました。よく一緒に遊んだのがなつかしくて連絡しちゃった」とLINEを送ったことがある。しかしもともとLINE不精の友人。返事は翌日に来ていたのだけど、一晩寝てすっかりむなしさから回復していた私はその連絡を入れたことが急に恥ずかしくなって、適当にいつも通り送って会話が終わった。「また遊ぼうね」

 

この度の友人からのLINEに対して返事をしたら、なんとそれに対して友人からも返事が来て、さらにそれに返事をしていたら、なんとなんと不思議と1週間くらいやり取りが続いた。転職したこと、今度引っ越すことを伝え、友人からは鬼滅の刃をきっかけにマンガやアニメにはまったこと、以前からの会社で仕事を続けていて、直属の後輩ができたことを聞いた。

やり取りから感じる友人は以前と全然変わらない。会ったり近況報告をしていなかった間、時間はそこそこ過ぎていたはず。なのに、友人とのLINEラリーでは、出会ったときの感覚のまま。そこそこに長い期間会っていないのに、どちらも勝手に別人みたいにはなっていなくて、むしろ出会った頃から全然進歩してないというか何も変わっていない。進歩してない、ってのはこの文脈では、割合いい意味で。

すごいや私たち。時が止まってる?ジョジョのスタンドで時間を止めるやついたよね、ザワールド時よ止まれとかそういうやつ。わたしたちのどちらか、それ使えるのではないか。