アンジェラの金言
オノ・ナツメ作のマンガ「リストランテ・パラディーゾ」の、その外伝というのかその他本編以外諸々の話をまとめた「GENTE」を思い出した。実家に置いてあるはず。捨てられていなければ。
(初老の老眼鏡スタッフたちにキュンのマンガ。このリストランテどこにありますか)
とあるリストランテの給仕クラウディオは若い頃、有名ホテルで同じく給仕として働いていた。仕事でミスを連発して叱られる日々、自信を無くしていたところに、ふらりと現れた同い年くらいの美しい女性に声をかけられる。
自分にはこの仕事が向いてないのではないかと、クラウディオは初対面にも関わらずその女性にこぼす。するとその女性は「仕事が向いていないのではなくて、環境が合っていないだけ」というようなことを言う。正確なセリフは忘れてしまった。何せ実家に置いてあるので確認のしようがない。でもこのセリフは私の心に残っている。
「仕事が向いていないのではなくて、環境が合っていないだけ」。自分に合う環境を選ぶこともまた重要である、というのは何かに行き詰って自信を無くしているときに勇気をくれる。
自信を無くす度に環境のせいにし、すぐに別のところに行くということはさすがにしない。けれど、どんなに努力して、やり方を変えるなり工夫するなりしても、もうどうにもダメだったら、そういう考え方にシフトするのも悪いことではない。そういう勇気というか、背中に手を添えるような安心感をくれる。
行き詰まったとき、それは環境が合っていないのかもしれないというのは、何も仕事だけではない。趣味でも友人でもSNSでも、ある程度なんにでも言える気がする。
せっかく好きなことがあるのに上手くいかなくて、このまま続けるべきかいっそやめるべきか迷うなら、新たな選択肢として「環境を変える」というのは非常にいいと思う。
自分の好きなことは、自分のペースでほどよく続けられたらいい。ほどよく、心地よく。そのための環境は選んでいい。好きなことを、外的要因によってやめてしまいたくなるのは、切ないことだと思うから。
クラウディオも、勤めていた有名ホテルを辞めてもう少し小さいリストランテに就職し、好きな給仕の仕事を続けることができたと言っていた。(気がする)
ちなみにクラウディオに声をかけたその女性の名前はアンジェラ(「天使」の意味)といい、実はホテル令嬢であり、そして同僚シェフのフリオの婚約者でしたっていうオチつき。若きクラウディオ青年、ちょっぴり傷心。
マンガのことを思い出したらおいしいパスタが食べたくなってきた。オノ・ナツメ先生、クラウディオたちの働くリストランテはどこですか。