妄想の食べ物

食べたい物がはっきりとしているときに限って、いざ買いに行っても売っていない。最近それが続いている。インスタやネットニュースで見かけたセブンイレブンのスイーツが食べたくて、もう何件のセブンを回ったか。もはやあの記事たちはフェイクニュースだったのか、それともただ私の妄想なのかとまで思えてくる。

食べたくて仕方なくって、売っていなくて泣きたくって、セブンをはしごして徘徊してまで探しているのが、「生食感カヌレ」。

カヌレが好きだ。出来立てのガリっとした歯触りも、次の日のむっちりした食感も好きだ。
手作りするのは手順だの分量だの器具など、とんでもなく大変らしい。生地を休ませる工程があるそうだが、そこに到達するまでに休みたくなるのは人の方じゃないのだろうか。
とにかく、カヌレは店で買いたい。その方が美味しいに決まっている。誰かが作ったのを食べる、文字通り、美味しいとこ取りが一番だ。
そんなカヌレに生クリームが乗って、われらがセブンイレブンで購入可だそうだ。インスタで見かけたその投稿者は「地域限定かもしれない」と書いていたが、なあに、恐れる必要はない。

ご丁寧に写真に撮ってくれた裏面ラベルの工場の所在地は埼玉。地域限定と言えども、関東と言う名の地域のことを指しているのだろう。売ってるはず。売ってなきゃおかしい。

売ってないんだこれが。これが人生。

工場の所在地まで確認する生粋のストーカースキルを発揮したのに、売っていない。
東京の端くれで隣県雪国扱いされるのがデフォルトの地域ではあるが、一応東京だ。THE関東。関東OF関東なわけだ。
でもまあ、ほらカヌレって人気だし。ちょうどこの店舗では売り切れだった可能性もなくはない。案ずるなかれヘミヤマよ。実はもう一つ、セブンイレブンには気になっていたものがあるじゃないか。それが「台湾カステラ」。

これもインスタでも見た。確か、た し か、ホットスナックのところに売っているみたいな感じだったかように記憶している。うろ覚えだが、そんな感じだった。店員にフェイクをかけないように(会計だと思わせないように)レジのホットスナックのところをゆっくりうろつく。くそ、超強度視力の近眼が憎い。ホットスナックの商品名が書かれた小さい文字が全く読めない。

売ってないんだこれが。(二回目)これが人生。酸い。人生が酸い。

レジの前をにらむようにゆっくり通り過ぎてしまった手前、何も買わずに出ていくことができず、適当にオランダワッフルを買った。おいしかったけど、これじゃ無い感の勝ち。つまり私の負け。くやしい。

別の日、人気大食いYoutuberのASMR動画を見ていたら、スタバの新作桜ドリンクを飲み、ケーキを食べていた。まんまと試したくなり、スタバに足が向く。

スタバはいつだってハードルが高い。
店の前まで来て、行くか 止めるか、テイクアウトか、どうする、と手に汗握り自問自答タイムを発動する。店内をチェック、ほぼ満席。価格表を確認。食べたいと思っていた桜のシフォンケーキと桜のラテ、二つで1,000円。財布の中、1,200円。よし。

セブンイレブンでスタバの桜のチルドカップ買おう。カヌレチェックしよう。台湾カステラはあるかな。

売ってないんだこれが。(三回目)いや、チルドカップはあった。でもカヌレと台湾カステラはない。妄想だったのかもしれない。いやもうこれ妄想だったんだ。地域限定とかもうそんなレベルじゃなくて、ガチかつレベチの妄想。

そっかそっか、妄想か。
遠い目でチルドカップをすすった。クラッシュしたミルクプリンがズズズっと口に入ってきて驚いた。
おいしかった。(よかった)

※台湾カステラは店舗限定っぽいです。妄想じゃなさそう。(よかった)