オーストラリアでホームステイ 2.ご対面

大学2年生の9月。1ヶ月だけオーストラリアにてホームステイをした。

大学の授業のプログラムで、ホームステイをしながら現地大学の英語教育機関で勉強し、帰国後レポートを書くと単位が3つもらえちゃう、というもの。(我ながら下品な言い方である。)
プログラムに参加したのは大体30人くらいだっただろうか。

さて、出国前にホームステイ先に何を望むか、というアンケートを書いた。
あれだけホストファミリー妄想がはかどってたというのに、確か「タバコを吸わないとありがたい」とかテキトーに書いた。さすが大学2年生。なんでそこやねん。

いよいよ出国日。
家を出る10分前になったとき、当時付き合い始めたばかりの初彼がバイクに乗って登場し、泣きながら自宅から徒歩5分の最寄り駅まで荷物を運ぶのを手伝ってくれたのはまた今度別の機会に綴るとして。

無事に到着したオーストラリアの季節は春。日差しの強さと日陰の肌寒さに戸惑いつつ辺りを見渡せば、ヤシ科のやたら大きい街路樹やら、野生のインコやらオウムやら。
すごい、すごいぞオーストラリア。
当たり前だが看板はすべて英語で、道行く人は外国人ばかり。
いや、むしろオーストラリアでは自分が外国人なのだけれど。

空港から教育機関(つまり学校)に向かう。
その道中、バスの中から見た高速道路の景色だけでうら若き女子大生のわくわくボルテージは最高潮に達するのだ。

学校に着いたらいよいよホストファミリーと対面する。

やさしいファーザー
料理上手なマザー
おてんばでシャイなドーター(10歳)
いたずらっ子のリトルブラザー(6歳)

私は彼らと1ヶ月過ごし心の交流をするのだと、いったいどれくらい妄想もといイメトレを重ねたか。なんなら年齢等の細かい設定まで増えているではないか。

プログラム参加者30人の各ホストファミリーが1組ずつ教室に入って来て、担当する参加者の名前を呼び自宅へ連れていく。
一人、また一人と名前を呼ばれ、だんだんと残っている参加者が少なくなってきた。

教室に入ってくるホストファミリーはほとんど私の妄想、いや想像通りの優しそうな人たちだったが、なかなか私は名前を呼ばれない。
自分の名前が最後まで呼ばれなかったらどうしようかと焦り始めたとき、赤紫色のベリーショートでまさにオーストラリア人といったおおらか体型のおばちゃんが教室に入ってきた。

私が描いていたホストファミリーは全員髪を染めてないので、このパンクおばちゃんは誰のホストマザーかしら、なんてスルーしていた。だって私のホストファミリーじゃないもん。だってなんか夏木マリに似てるもん。ホストマザー感皆無だもん。

この時一つ学んだことがある。
嫌な予感とは高確率で当たるものだ。

「ヘミヤマ、nice to meet you」


そんなわけで無事にホストマザーとの対面を果たしたのだった。
どうか、タバコだけは吸いませんように。