日常は奇跡の結果で、そしてその続き

昨日の地震で多くの人が様々なダメージを負っただろう。肉体的、精神的、物質的、ライフラインのストップ。何もなかったという人だって、11年前の記憶と恐怖がよみがえったはずだ。

しばしば私の記事に登場する岡田くんは被災地出身で、彼もまたその経験がある。
「昨日、夜やっぱりよく寝られなかったな、思い出して。」

付き合い始めてそれほど経っていないころ、狭い布団で二人寝ていた朝方。私がダイナミックに寝返りをうったのだったかベッドフレームに手足がぶつかったのだったか、とにかく寝ていたその場所がほんのすこし揺れた。
すると寝ていたはずの岡田くんが飛び起きて、私を自分の方に引き寄せて「地震?」と言った。
私は 違うよ~びっくりさせてごめん、と言って笑いながら謝った。守ってくれようとしたことに感動したのと、おおげさだなぁというおかしさがこみあげて、そのままもう一度眠った。岡田くんの心臓の音が早くて大きかったのを覚えている。

2011年3月、岡田くんは進学準備のため、東北の海沿いのインテリアショップに行くことにしていた。初めての一人暮らしの家具や日用品を揃える予定だったらしい。
そしてその予定日の前日、あの地震が起きた。

先日、岡田くんはご家族の退院と転院の手伝いに、実に3年ぶりに帰省した。仕事の都合で1泊2日の、実質20時間くらいの滞在だったようだ。もしもっと休めるようだったら2日3日とかそれ以上滞在できていたはず。
帰ってきてまもなくの昨日、また地震だった。

3.11のあと、ニュースでみた光景を当事者として話してくれた。幸い実家は内陸で津波の被害はなかったらしい。それでもライフラインが止まったことの苦労を聞いた。人命救助が最優先のため、けががなく家がある地域は、支援が来るのを耐えて待っていたということだった。

もしインテリアショップに行くのが1日早かったらと思うとぞっとする。岡田くんが、もしそうだったら会えてなかったねと、断定して言うのがつらかった。

つい先日の帰省も、もし仕事の都合がついて連泊してたら帰ってこられなかったなと言った。「新幹線止まってるし」

そうだねぇと返事しながら、以前寝ている私を引き寄せて守ってくれようとした岡田くんを、大げさだと思って笑ったことを思い出していた。