花に罪はないけれど(雑記)

退職を前に、別支店の先輩と今からお茶しに行こうというタイミングで、社長にものすごい大きい花束をいただいた。カサブランカ(巨大なユリ)が4つ。タイミングよ。ちなみにその日は退職3日前。フライングよ。相変わらずの空気の読めなさと裏目に出る真っ直ぐさだ。


退職した。そしてすぐ来週から次の仕事が始まる。がんばるぞーという気持ちより、うまくなじめますように、大きいミスをしませんようにという緊張感がある。

なんで転職しようと思ったのだっけ、とうっかり忘れてしまいそうになるくらい、同僚からは手厚いお別れをしていただいた。そんなこともないのかもしれないけれど、そんなことしてもらえるとは思ってもみなかった。私からお配りした挨拶のお菓子がしょぼくて(なんならケチったくらいだったのだ)、胸が痛むくらいには罪悪感があった。

でもやっぱり、この会社にはもう尽くせないと何度も思っていたわけだし、その現状を打破したのだ。会社はめちゃくちゃだったけど、同僚一人ひとり、人として向き合えばみんないい人だった。それが最後に思い出せてよかった。

退職して、わずかだが健康保険証を持たないニート期間を迎えた。暇で、それに最近急に暖かくなってきたから毛布をコインランドリーに持って行って洗った。ふわふわした感触が読みがえって気持ちがいい。

家に帰ると、フライングでもらったでっかいカサブランカと、退職日にもらったかわいいサイズの花が待っている。すごい香りが部屋中に広がっている。家中の瓶をかき集めて、カサブランカは梅酒を漬けていた瓶に、その他はインスタントコーヒーの空き瓶と箸立てに使っていた瓶に挿した。それでも足りなくて、飲み口が壊れたステンレスボトルにも挿している。

甲斐甲斐しく水を替え、元気がなくなってきた花の茎を切ってやり、短くしながら飾っている。案外こういう作業は嫌いではない。花屋みたいになった部屋の一角に、いい感じの日差しが差し込んでいて、水がぬるくならないかよぎったが、素敵な光景だなとぼんやり思った。

カサブランカのつぼみが開くたびに、ティッシュで花粉を包んでプチプチともぐ感触が楽しい。数えてみたら14も花を持っていた。どうりで、目がかゆくてくしゃみが出るわけだ。やはりそういう社長だったのだ、と呆れと安堵の間で花を見つめる。