寒ざらし
NHKの「グレーテルのかまど」は、お菓子にまつわる物語と、その作り方を紹介する番組。瀬戸康史さんとキムラ緑子さんのゆるいやりとりも好きで、私はこの番組を気に入って見ている。
7月、島原の「寒(かん)ざらし」が作られていた。ただただシンプルで何より白玉が懐かしくて、食べたくてたまらなくなってしまった。
オーケイ、今年の夏は寒ざらしをエンジョイします。
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https://www.nhk.or.jp/kamado/recipe/353.html
小さめの白玉団子がゆで上がったら、一旦冷水で締めて、その後改めて美味しいお水に1時間ほどさらす。ざらめで作った蜜をたっぷりかけて出来上がり。水にさらすことで白玉の外側がとろりとするらしい。
暑い日、そのとろりとした白玉を食べた後、冷たい蜜をごくごく飲み干してしまう人もいるという。
うわー、美味しそー。
寒ざらしが、脳裏から目蓋の裏から離れなくなったまま、もんもんとしながらその日は寝た。翌日すぐ会社帰りにスーパーに寄って白玉粉を買った。どこかの名水と書いてある美味しい水も。
蜜の代わりにはフルーツみつ豆の缶を買った。
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いざ白玉作り。
白玉粉1袋200gから半量出して、水を加える。
大さじ小さじのスプーンも最近買った私がスケール(はかり)なんぞ持っているわけもないので、気合いで半量出した。
否、出てきた白玉粉に対してこれは半量です、と決めつけたのに近い。
水を加える。えい。混ぜる。ぐるぐるぐるぐる。
ん?なんか水っぽいな。『片栗粉と水の絶妙な割合になると、衝撃を加えたときに液体なのに個体みたいになる』というあの現象(ダイラタンシー)みたいな具合。
生地のかたさの目安である、耳たぶには遠い。分量あってるよね?(そもそも粉の分量は適当だが)と片栗粉の裏面を見る。
ん?水を、少しずつ、入れる?
あっははーー、なるほど本来ならば調整しつつ加える感じねー?うーん、なるほどー?一気に加えましたよね、私?
水が多いなら粉を足せばいい。
今度はまとまらない。
粉が多いなら水を足せばいい。
うーんまたゆるいなー。
あれれー?変だなー、全体の量が増えてきてるなー。
これ私、前にカレー作りでやってるやつだなー。デジャヴだなー?
https://www.shortnote.jp/view/notes/ABwbWCw4
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奇跡的に生地がまとまったら今度は団子をつくる。棒状にまとめて小さめに切る。そして丸める。丸めたら真ん中をくぼませるんだけっけ。えい。えいえいえい。ゆでる前のくぼませた白玉は白血球のビジュアルだと思う。遥か昔にそんなことを考えながら作ったという思い出がよみがえった。なんとなく嬉しくなる。
とかなんとか考えながら作業を進め、いつのまにか終わった。たくさんの白血球ができた。ははは。ちょっときもーい。ちなみに寒ざらしの白玉はくぼませなくていいそうです。
沸騰した湯に入れ、浮かんできたら掬って冷水で締める。そしたら別の容器に入れた美味しい水の中で1時間さらす。
キンキンにしておいたフルーツみつ豆の缶を開けて、一緒によそう。
できた。
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ひとくち。
美味しい水にさらされた白玉は、外側がとろりとしてやわらかく、蜜が絡んで口に甘味が広がる。
はずだった。
あっ……るぇぇぇぇ?えー?
なんか、違う…。ち、違うよー!これ違うよー!
冷水で締めすぎて固い。
フルーツみつ豆の蜜が予想以上に爽やかで、白玉と全然合わない。
ポキポキ食感の寒天も、白玉とバチボコ殴り合いの大喧嘩。
ええ~…
失敗。
おいしくは、無い。
ええ~…
どうしよ白玉、めっちゃ残ってる…。
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寒ざらしでエンジョイの夏はまたいつかに持ち越し。いつか本場に食べに行けばいい。そのときは本当に美味しい、本当の寒ざらしを。
まずは目の前の白玉を、どうにか食べる。なんか、すりごまとか砂糖とかで、醤油とみりんとかでなんかして。ちょっと固めのモチモチ白血球を。どうにか。