弁当記
岡田くんの休日出勤の日限定で、お弁当を作って渡している。自分の弁当ならなんでもいいが、人に食べてもらうとなると、さてどうしたものかと考えてしまう。
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今のところお弁当を作るのは楽しい。インスタグラムで世の中の賢人たちによるお弁当アイディアを眺めるのも好きだ。詰め込むのを倍速動画にしている人の作業も感心してしまう。
今まで、そぼろのり弁と中華炊き込み御飯のおにぎりと、あとはオムライスを作った。割りと上手くいった上、岡田くんがすごく褒めてくれた。実況中継で、「今から食べます!」「わー!!」「おいしい!」「ありがとう!」と、連絡をくれた。褒め殺し屋とか2000年問題の前後にいたよね。岡田くんならなれるよ。それくらい褒めてくれる。
調子に乗ったわけではないが、しかし褒めてほしいしお昼に楽しんでもらいたい、そんな気持ちで今回買ってみた。「タコさんウインナー」。
真っ赤だ。深夜食堂という漫画で見たことがあるが、食べたことはない。焼くだけ、足が開いてきたら完成。鮭弁当にタコさんウインナーを載せる。へぇ、よく見ると目もついてる。かわいい。岡田くんにもきっとウケるだろう。
お昼の時間になって、そろそろ食べてるかな、と想像する。しかしいつものような連絡がない。忙しいのかしら、と思ったら「食べました!ありがとう!」と事後報告だけ。あんまりウケなかったか、タコさんウインナー。
その日の夜、仕事終わりに部屋に来た岡田くんは、いつもと同じようにお弁当を美味しかったと言ってくれた。忙しかった?と聞いたら、いや今日は、と。
「新入社員の研修に1日ついてて、昼も一緒に食べてて連絡できなかった」
へぇ。
え。
新入社員のその人に、タコさんウインナー見られた?
「そりゃね!」
ごめぇぇぇぇん。
「鮭おいしかった!」
ごめぇぇぇぇん。
なんでよ、と岡田くんは笑ってくれたが、いやいやいやいや。アラサーの上司がお弁当にタコさんウインナー入ってたらどうよ。ねぇ。どうなのよ。ごめぇぇぇぇん。
どうか新入社員さん、他言無用でよろしくお願いします。