レベリオ。アロホモラ。

最近のブームはホグワーツレガシー。PS5のゲームソフトで、ハリーポッターの世界観を楽しめる。CGの精巧さ、肉眼で見るよりもそれは美しい。自分のキャラクターを作ったらホグワーツ(魔法学校)で勉学に励んだり、箒に乗って空を飛び、禁じられた森に冒険へと出かける。レベリオと唱えて、隠れたアイテムを探したり、アロホモラで宝箱を開錠している。魔法学校の違う寮の友人もできて、充実した学校生活を送っている。ゲームの話だが、とにかくそれにはまっている。

ほしいものはお金を貯めてから買うという概念が全くない衝動の男、岡田くんが購入したPS5だが、最近は私の方がプレイ時間が長い。

つくづく不思議なのだが、岡田くんはなぜお金を貯めて買うということをしないのだろう。岡田くんだけに限ったことではない。子供より大人の方が、ほしいものをいったん我慢することができない傾向にある気がする。手元に使えるお金があるからというのが解なのだろうが、いやいや岡田くんよ。一人暮らしだったら別に文句はない。が。しかし。そういう衝動が積み重なると、私たちいい大人二人ともごはんが食べられなくなってしまう。想像してみよう。PS5は持ってるのにお米が買えない30代二人の姿を。悲しくならないか。想像しながら私は箒にまたがり、魔法動物を捕まえに出掛ける。必要の部屋ではマンドレイクを育ててる。まったく。衝動買いは困る。財布のひもとともに、気を引き締めてほしいものだ。レベリオ。アロホモラ。

 

ペット可の物件に住んでいる。時折小型犬や猫を抱いた住人とすれ違う。犬が大好きなのだが、好きすぎるあまり最期の日までを想像して、飼う前から悲しくなってしまうため飼えない。なのでそのすれ違う犬猫に大変癒されている。ペット可の物件にして本当によかった。

 

最近は勉強することも本を読んで知識を得ることも全くしていない。最善策はないか、どうすればもっと良くなるかを、考えることが本当に嫌になってきた。面倒くささが圧勝だ。ホグワーツレガシーでも推理が必要な場面があるのだが、考えるのが嫌すぎて、すでに一度プレイを終えた岡田くんにパスしている。

考えるのが面倒なのに、考えなければならないことはどんどん増える。明日の朝ごはんとか、帰省の新幹線の時間とか、それに最近洗濯機が脱水の時になんだかつらそうな高音を出すようになってしまったが早めに新しいのを買った方がいいのかとか。

会社が、今私が勤めている事務所を閉めて、本社に集約しようとしている。今の事務所までは自転車で通勤できるが、本社になったら通勤時間、ドアツードアで片道2時間になる。往復4時間。一週間で通勤時間20時間。一か月で80時間。一年で960時間。

時間だけが問題なのではない。

 

子どもをどうするか。

産みたくないが育てたい。もしくは産むから誰か育ててくださいという、全く覚悟ができていない状態だ。私の実母は悪気なく軽率に産めばいいとか言うが、命がけの出産で何かあったら、軽率に言ったことを反省したり後悔するだろうか。なるべくなら本当にそうなる前にまずそういうことを想像してほしい。

おそらくワンオペ育児というものになるだろうが、その際我が子をないがしろにしてしまうかもしれない。そうなったとき、責任なんてとれない。誰に対してどんな責任をとればいい。愛せない子どもに対して、愛情を注ぐことなのか?話が回っていやしないか。

そもそも世の中の子どもが無条件にかわいいと感じられない。子どもは子どもだな。それだけだ。犬の方がよっぽど無条件に愛せるし想像しただけで表情筋がゆるむ。人間の子どもにそれはない。「産めばかわいくなるよ」と仰せの方はごまんといるが、ああそうですか。以上だ。今年の夏も暑くなるそうですよ、ああそうなんですね。その程度にしか相槌できない。誰かが経験した感情の変化に興味が無いからだ。誰しもがもれなく当てはまるとか、そういう一般的とされた理論を言われてもなぁ。そうですか。へえ。

 

しかしわかっている。産むなら早い方がいい。少しでも子どもがほしい気持ちがあるならすぐにでも挑戦したほうがいい。それはわかっているつもり。

しかし現実、勤務先の事務所が本社に集約されたとして、子どもを授かったら、その体で満員電車でその通勤時間に耐えられるか。子どもが生まれたとして、その通勤時間で保育園の送り迎えやら急な呼び出しに対応できるのか。転職したての岡田くん、子育てに参加できないだろう。

じゃあ今のうちに私も転職するのか。なるべく早くに子どもを産みたいと試みている人材を、企業はほしいと思わないだろう。だって仕事を覚えるより早くどうせ産休育休で休むんでしょう、と。子育てがひと段落してからにしたら、と。

考えれば考えるほど欝々とした暗い気持ちになる。面倒だ。考えてもなるようにしかならない。気持ちを切り替えて現実を受け入れるしかない。考えても無駄なのだから。

 

岡田くんは帰りが遅い。帰ってくるまで彼のPS5でホグワーツレガシーをする。考えなければならないことを全て無かったことにできないか、そんな魔法はないものかと、ないんだけど、嫌なことから逃げたくて。